―― 原作の『DEATH NOTE』は人気作品ですが、アニメ化の話を受ける前からお読みになられていたのですか? 荒木 9巻くらいまでは、普通にお客さんでした。マッドハウス社内で流行っていたんですよね。大好きな作品だったので、自分のやりたい事は全て脇に置いて、原作のために尽くそうとまず思いました。原作のよさが100あるとすれば、可能ならさらに上乗せして120を表現するという意気込みで臨んだつもりです。
―― アニメ化する際に、気をつけた事などありましたか。 荒木 基本的に動きが少ないマンガなんで、画的にどう持たせるかというところになりますね。1話のノートに名前を書くシーンなんか、笑ってしまうくらい派手に、という方向でやってみてそれの反応が良かったので、後続話数で高い塔の上に月やL等のイメージカットの演出へと発展させました。1話の反応が悪ければもっとホラー路線で攻めようと思っていました。
―― 物語についてですが、原作より月に寄り沿ったかたちの展開になっているように見受けられました。 荒木 1話目でリュークが思ったように、視聴者にも月の面白さを認識してもらって、彼が辿る顛末を追いかける……体験するという構図にしたかったんですよ。だから最終回も、ずっと見ていた主人公を嫌いになって終わりたくないと自分は思ったんです。色々あったけど、まあ、安らかに眠りたまえよ、と言って見終えるようにしたかった。
―― Lの死を描いた25話も非常に衝撃的でした。これも監督がコンテをやられていますよね。 荒木 あの話にオリジナル要素が多かったのには、30分でひとまとめにするにあたって、いくらかかたちとして膨らませなくてはいけなかったという都合がまずあります。その上で、特別な回という印象を与えるために、いつも大量にある台詞を逆に少なくするべきだろうと思ったんですよ。神聖な静けさみたいなものがフィルムに宿ればいいなと。
―― オープニングについてのコンセプトもお聞かせいただけますか。 荒木 ふたつ作るというのは最初から決まっていました。ひとつ目は、みなさんが思い描く『DEATH NOTE』のイメージに沿ったものです。もうひとつは、そこから逸脱したものを作るというのがコンセプトでした。
―― ふたつ目のオープニングにおける独特の色のイメージは監督が? 荒木 いえ、あれは森山(洋)君に『ど派手に』と言う指定でまず好きに塗ってもらったものを色彩設定の橋本(賢)さんにまとめてもらいました。その後の作業でもあらゆるスタッフに『もっとヘンに』『派手に』と言い続けていたら気がつくとこんな事になっていてびっくりしました。
―― あらためて本作を振り返ってみて、いかがでしたか? 荒木 やはり、素晴らしいスタッフに恵まれてはじめて成立した作品だと思います。意見がぶつかり合う事もありましたが、みんなの力が一丸となってできた作品です。
―― 監督にとって、本作はどのような位置づけの作品なるのでしょう。 荒木 原作が素晴らしいものでしたので、今回はその味を損なわずにアニメ化する事が自分にとってのひとつの大きなステップになると思っていたんです。今後は原作の力を借りなくても、荒木哲郎のフィルムを見てもらえるように頑張っていきたいと思っています。