―― 原作はアニメ化決定前から読まれていたのですか? 西田 ええ。このお話をいただく前から愛読していました。これは面白いなと。
―― 原作の魅力となると、どんなところでしょう。 西田 見た目は派手ではないんですけど、感情の揺れがしっかり描かれていて、読めば読むほど味わい深い作品です。「この原作だからこそ」と、スタッフの意気もあがっています。
―― そんな作品をアニメ化するにあたって、心掛けた事はありますか。 西田 まずは、原作のよさを過不足なく表現するという事ですね。かなり細やかな表現が多い作品なので、原作の行間を読み解く作業には気を遣っています。それと、美術にも目を向けていただけると嬉しいです。去年の冬の段階で、栃木にロケハンに行ったりもしました。西田(稔)さんという「キル・ビル」の背景も描かれた方にやっていただいているんですが、素晴らしいものに仕上がっています(と言いつつ、ガッツポーズ)。
―― では、アニメーションならではの魅力をお聞かせください。 西田 そうですね。カメラアングルやカット繋ぎなどを姉妹の感情に合わせたかたちにしていますね。例えば、静流が瑞生の事を心配していたりする時には、カメラを揺らしてみたり……。それから、アニメにして気をつけたというところもあって。アニメとマンガでは表現方法が違うじゃないですか。アニメは時間も空間もこちらが決め込んだかたちで視聴者に届けないといけないので、これはかなり難しいですね。
―― なるほど。劇中で出てくる妖怪達はそれぞれ非常に個性的で、表現しづらい部分も多いかと思いますが、工夫されている事などありますか。 西田 「すぐそこにいる、身近な者」という意識を常に持って描くようにしています。あまり過激な描写にはしないように。「妖怪との遭遇による戸惑い」っていうのは、「人と人が初対面で会う距離感」みたいなものだと思うんですよ。そんなに大層なものじゃなくて、これはひとつの出会いだと。そういったオーソドックスなモチーフを、オーソドックスなかたちにできたら、老若男女問わず見てもらえるんじゃないかなと思ってやっております。そういう意味では、『花田少年史』などに近いアプローチかもしれませんね。アクションじゃない部分での心理描写で、心に残る作品を成立させるというチャレンジでもあります。
―― チャレンジという事でいえば、今回は監督が全話のコンテを描かれているというお話を聞いたのですが。 西田 はい。準備期間も長くとっていただいたので。全話を通して統一性をとりたかったという事と、スタッフ間に齟齬を起こさないために、そういったかたちをとっています。それと、僕なりに全話を描くという事で、スタッフに対して自分の熱が伝わればいいかなと思いまして……。全話自分が描けば、言い訳が効かないじゃないですか。いいも悪いも、僕が責任をとる。その覚悟で挑んでいる。という事ですね。
―― 気合充分ですね。では、最後に本作で目指すテーマなどがあれば。 西田 先ほども少しお話しましたが、やはり我々が日頃感じている相手との距離感。相手を思いやるという部分ですね。ズバリ、テーマは「共存」で!