―― 今回、『魔人探偵脳噛ネウロ』という作品をアニメ化されるにあたって、特に気をつけた点はどんなところですか? 神志那 原作を読んだ時「これは面白いけど、アニメ化するのは難しいぞ」と思ったんですね。マンガって、読み返したりする事ができるじゃないですか。だから原作の滲み出る面白さが堪能できるんですけど、アニメ化すると「流し見」の状態になってしまうので、引っかかりがなくなってしまう。なので、今回は「分かりやすく」する事を心掛けているんです。そのために、アニメオリジナルの要素もかなり入れ込んで作っています。
―― なるほど。オリジナル要素は例えばどんなところに。 神志那 大きな部分では「弥子のお父さん事件」が解決していません。これは原作では最初に解決するのですが、シリーズとして分かりやすい1本の軸を作るために、物語を牽引する要素として残してあります。ネウロと探偵をやっていれば、そのうち事件も解決するかもしれない。そういう動機の部分を弥子に持たせているんですね。
―― 今のお話はシリーズ全体での事だと思うのですが、話数ごとでも、やはり分かりやすさを重視されているのですか。 神志那 はい。各話は馬鹿馬鹿しい場面を作って、楽しんで見られるようにしているつもりです。具体的に言いますと、犯人が犯行を告白するシーンですか(笑)。
―― そこがどうなるかは、原作ファンも気になるところですね。 神志那 そうですね。見所です。このシーンに関しては、アニメーションならではの動きの面白さも是非見てもらいたいですね。『ネウロ』という作品は、トリック的な要素よりも、落差が大事だと思うんです。犯人も同情できない人ばかりなんで(笑)。動機の部分ですっきりしない分、いかに馬鹿馬鹿しい殺人犯を仕立てあげられるかですね。
―― 各回の犯人の変貌振りを、楽しみにしています。 神志那 ご期待ください(笑)。ただ、同時に自分は「面白ければいい」というよりは、視聴者には、キャラクターに共感して見て欲しいとも思うんです。今回の場合は、弥子に感情移入してもらいたいし、そういう作り方をしているつもりです。お父さんが殺された事により、本人は相当傷ついているはずでしょう。トラウマになっているかもしれない。こういった事って程度の差こそあれ、現実でも普通にある事じゃないですか。だからこそ、そういう感情は大事にしないといけないと思うし。そんな中で、ネウロと一緒に探偵をやっていく弥子の気持ちはどうなんだろうとか。弥子がネウロにいじめられているシーンがあるじゃないですか。
―― 原作でも愉快なところですよね。 神志那 でも、それは簡単に見せてはいけないと思うんです。視聴者の中には、弥子と同じ中高生の方もいらっしゃると思うんですが、ひょっとしたら、こんな風にいじめられている人もいるかもしれない。だから簡単には扱えないですよね。と、同時にこのシーンは弥子の人間としての懐の深さを表現しているところでもあります。そういった事を視聴者にどう分かってもらうかという事を考えた時に、弥子の感情、心理描写をしっかりと描いてはじめて、理解してもらう事が可能だろうと。だからこそネウロは弥子を選んで、いまこういう関係が成り立っているんだっていう風に思ってもらいたいし、そこは大切にしていきたい。そして、その中で弥子に人間の表裏を知って、成長していってほしいんです。
―― かなり弥子に踏み込んだ作品になるんですね。 神志那 ええ。「単なる過激なアニメだったね」。というのでは何も伝わりませんから。彼女の心情をないがしろにせず、制作していくつもりです。
―― なるほど。それでは、最後に一言いただけますか? 神志那 アニメはマンガとはまた違う方向で考えていますが、原作よりも面白くしたいという意気込みでやっています。ぜひ期待していてくださいね。