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荒木哲郎の夢と26人の刺客
■刺客その3 『 ヒラオ君 』

皆さんこんにちは。
今日お話する夢は、ヒラオくんが木の実ナナと戦った夢です。
「ヒラオ君」というのはいまユーフォーテーブルで監督をやっている男で、
自分とはマッドハウス制作の同期だった縁で、今も仲良くしています。

この話はよくひとに話すので、
マッドの社内の方なら聞いたことのある方もいるかもしれません。
あれはもう4、5年前のことでしたか…。

自分は平尾くんと共に、デパートの広場のような場所で行なわれる集会に参加しています。
そこには20〜40代くらいに男女がひしめき合っていました。

会がスタートします。「まずは男性の方。」司会の男性がこう切り出しました。
「イケていきたい人―!!」

場内はざわめきます。イケていきたいかどうか…!?考えたこともなかった…。
そうして間もなく、幾人かが手を上げます。私も手を上げました。
イケていきたがっている自分を否定することはできない…そう思ったからです。
そんな私をヒラオくんは「あーあ」という顔で眺めています。

次に女性に対して同じ質問。「イケていきたい人―!」
…するとスッとひとりだけ手が上がりました。
その唯一の女性こそ木の実ナナでした。

平尾くんは爆笑しています。彼は私に、
「君はああいう人に対して『イケていきたい』って宣言したんだよ」などど言います。

そうして、笑いの収まらぬ平尾君はさらに、ヒョコヒョコと木の実ナナに近付き、
「ねえ肌黒いよー?ねえ肌黒いよー?」
とからかい始めました。

しかしその時です。木の実の瞳がギラリと光りました。
私は、あぶない平尾くん!と声をかけようとしましたが、時すでに遅し、

シャッ!
と木の実の右手が一閃すると、平尾君の頬からは、滂沱と血が流れ始めました。
木の実の仕込みカミソリです。彼女は、のたうちまわる平尾君を冷たく見下ろします。

愕然とする私の前で、平尾君は頬から血を流しながら、こう絶叫しました。
「こんなのアリなんスかァ!!」
その目は私にこう訴えていたのです。
「ナシだと言ってくれ」
「木の実、そりゃナシだよと言ってくれ」と…。

しかし彼の醜い有様を正視できない気分になっていた私は、
木の実の蛮行への怒りも手伝って、ついこう叫んでしまったのです。
「いいかげんにしろよ!お前ら!!」
…呆然と私を見る平尾くんの目に、みるみる哀しみが拡がっていきました・・・。

この夢を思い出すたびに、
「俺は平尾くんを何だと思ってんだろう」という気持ちになりますが、
まあこんな夢を見たくて見たわけでなし、いわば私も被害者です。
だから勘弁しておくれ。平尾くん。

刺客データ3:ヒラオくん

刺客データ3:ヒラオくん

そんな平尾くんも先日結婚し、私と嫁はその婚姻届に証人としてサインしました。
彼の奥さん含め4人で食事したその日は大変に楽しく、そして同時に、「制作机でダベっていたときには、こういう未来が来るなんて想像もしなかった」と思いました。そして私は、「こういうことがあるから、人生は面白い」と、少しも大袈裟でなく思ったのです。それにしてもこの夢はひどいよな。いやあごめんねー。

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