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荒木哲郎の夢と26人の刺客
■刺客その6 『 トオルさん 』

皆さんこんにちは。
今日お話する夢は「トオルさん」にまつわる大変失礼な夢です。
「トオルさん」とは、現在マッドハウスで活躍する演出家、高橋亨さん。
「魔術師オーフェン」「デジキャラット」「ウテナ」等々で名を挙げ、マッドでも「MONSTER」「NANA」等で素晴らしい話数を演出しています。
自分とは「デスノート」でお手伝いしていただいた縁があり(魅上照登場の話数を、大変面白くして頂きました)、実ははそれがなくとも喫煙室で毎日会う「タバコフレンズ」のお一人でもあります。

その夢の舞台は阿佐ヶ谷パールセンター。
そこを嫁とふたりで歩いていた時のことです…。

突然ですが繰り広げられる阿鼻叫喚。
パールセンターにやってきた戦車によって、人々は蹂躙されています。
人がキャタピラに踏み潰される異様な光景に、私と嫁は

「これはヤバい」

と感じ、即刻買い物をとりやめ、家に帰ることにしました。

無事家に帰りついた私たちですが、
すでに戦場と化したこの町。家の中にも死体があり、
とても気持ちが休まりません。しかし私は焦りを感じています。なぜなら
漫画の締め切りが近付いているからです。一刻も早く仕事にかからなくてはならない。
しかし死体も片付けなくてはならない。一体どうすれば…。

その時、救いの神が現れました。そう、高橋亨さんです。
「どうしたの?」
と聞かれ、私は事情を話しました。するとトオルさんは力強い口調で、

「わかった。死体は俺が片付けるから、荒木くんはすぐに仕事にかかれ」

と言ってくれました。

「すみません!」

私は死体をトオルさんに任せ、妻と2階に上がって仕事を始めました。
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そうして安心して仕事を進め、しばらくして様子を見に1階に降りました。
「どう調子は?進んでる?」

トオルさんはすでに死体の処理を済ませ、一服しています。
私は「おかげ様で頑張れてます」と返事して、ちょっと水を飲もうと流しへ行きました。

すると流しにはこういうもの↓がありました。

「オゲー」

激烈に戻してしまう私。これはキツい。無理だー。仕事なんてできないよー。
その時私は漫画で大変な群集のシーンを描いていたのですが、
もう吐き気でそれどころではなくなってしまいました。
するとその時です。神の言葉が私に降り注ぎました。

「わかった!群集は俺が描くから、荒木くんは休んでいろ!」

「ありがとうございます!」

…そうして必死に群集を書くトオルさんの背中を、
私と妻はボンヤリと眺めたのでした…。

刺客データ6:トオルさん

刺客データ6:トオルさん

実はこの話の背景には、色濃く「デスノート31話」の記憶があります。その回でトオルさんは本来コンテのみの担当だったのですが、実際の作画作業が難航した大詰めのとき、なんと悩みのタネだった「群集シーン」の原画を一手に引き受けてくれたのです。その時のことが想起され、このように「死体を処理してもらった上に、さらにモブを描いてもらう」夢になったのだと思いますが、幾らなんでも都合のいい夢だと自分でも思いました。今回、「この夢を書かせてほしい」という私の願いを、快く許可して下さったトオルさんに感謝いたします。失礼ですよねえ。いくらなんでも。ホントごめんなさい。

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