―― 第13首は千早が倒れたり、新のおじいちゃんのエピソードがあったりと盛りだくさんですが、どのカットに力を入れましたか。
宍戸 そうですね。この話のポイントは、新が「かるたが好きや」っていうところですね。
―― なるほど。新のかるたへの思いが溢れ出すところですよね。このカットです!
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新から溢れる、かるたに対する思い。マンガからの抜粋で、コマを貼り付けてある。 |
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―― ……あれ? これはマンガのコマの貼り付けですね。
宍戸 ええ。末次(由紀)先生のマンガのコマが凄く良かったので、絵コンテでも使わせていただいたんです。
―― 確かにいい絵ですよね。このカットのなかで、宍戸さん自身で工夫されたところはなんでしょうか。
宍戸 このカットがコマの貼り付けだということですね。
―― えっ? どういう意味ですか?
宍戸 原作で良いコマがある時に、わざわざ変える必要はないんですよ。『はじめの一歩』をやってる時に、プロデューサーに言われたことがあるんです。「原作ものが見たい人は原作が動いてるところが見たいわけで、わざわざ変える必要はない」と。その通りだと思います。
―― なるほど。
宍戸 浅香監督の凄さも、そういうところにあると思うんです。1話のコンテを見た時に「これは凄いぞ」と。できあがったものを見て、さらに驚きました。原作のいいところを丁寧に作り込んで見せている。フィルムの見せ方が変に気取っていないんですよ。
―― 最近は外連味の多い演出で引っ張っていく作品も増えている印象があります。
宍戸 そうですね。でも、そういう作品はえてして原作の作品性を壊してしまいがちです。浅香監督のような丁寧な作り方が減っているのは悲しいことだと思います。
―― 宍戸さん自身の演出はどうなのですか?
宍戸 丁寧な演出が得意かどうかは分かりませんが、斬新で外連味のある演出法といったものは引き出しの中にないんですよ(笑)。だから『ちはやふる』のようないい作品に出会えて幸せだと思いますね。
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