今回は『ちはやふる2』でも絵コンテを担当されている渡邉こと乃氏に、 前シリーズ『ちはやふる』での絵コンテについてお話を伺いました! ―― 先日の潘(めぐみ)さんのリアル・ツアーは、ありがとうございました。 潘さんもとても喜んでいただけたようです。 渡邉 いや、自分も楽しんで解説させていただきました(笑)。 ―― 渡邉さんは、現在放送されている『ちはやふる2』でもご活躍されていますが、 今回は第一シリーズの『ちはやふる』を振り返って、お話を伺いたいと思います。 渡邉さんは二十一首の絵コンテを担当されていますね。 どこに力を入れられましたか? 渡邉 この話は梨理華ちゃんとの戦いがメインだったんですが…。 ―― 小学六年生ながらかるたの天才と言われる女の子ですね。 渡邉 はい。この試合の後半で梨理華ちゃんが追い込まれていくんです。 その梨理華ちゃんの焦燥感をどう見せるかというのがポイントでした。 ―― 具体的にはどのあたりになりますか? 渡邉 カット227ぐらいからですね。 千早の表情は拾わずに状況のみを追いかけることで、梨理華が追い込まれていくことを強調しているんです。
―― 確かに、ここからは千早が映っているカットが少なくなりますね。 渡邉 はい。梨理華も負けじとすぐに札を取ろうとするんですけど、お手つきしてしまう。 周りが見えなくなっていくんです。ここでは逆光気味になるように下からのカメラで梨理華を撮って、少し影を落としています。 梨理華の不安感を視聴者にも感じてもらうための演出です。 ―― 梨理華ちゃんにスポットを当てることで、どのような演出の効果が生まれるのでしょうか。 渡邉 千早なんです。梨理華の追い込まれ感を出せば、結果的にそれを見つめる千早の成長を、 視聴者に伝えられます。梨理華はかつての千早なんですよ。 ―― 千早と梨理華ちゃんは対比になっているとわけですね。 渡邉 ええ。かつて早く取るということを一番にしていた千早を、今の千早自身が見つめる。 そうすれば、視聴者にも千早の成長を実感してもらえるだろうと思ったんです。 ―― なるほど。確かにそんなことを実感しました……。 話は少し変わるのですが、このあとで渡邉さんは 『BTOOOM!』の監督をやられましたね。 『ちはやふる』での経験が活きたことはありましたか? 渡邉 いや作品の傾向が違いすぎるので(笑)。 直接的にはないですね。ただ、『ちはやふる』の反省を活かしてはいたと思います。 ―― 反省、と言いますと? 渡邉 『ちはやふる』の私の絵コンテは、 フレームに対するキャラクターの収まりがあまりよくなかったと思います。 いつものマッドハウスだと、絵コンテを拡大コピーして、上からなぞってやればレイアウトとして成立するぐらい、 しっかりしたものが多いんですよ。 ―― 確かに。マンガみたいに綺麗な絵コンテが多いですよね。 渡邉 はい。でも私の絵コンテはおざなりな部分があったように思えます。
なので、なるべく『BTOOOM!』では絵としての収まりが綺麗になるようにやっていました。 今回で本コーナー『ちはやふる絵コンテ指南書』は終了になります。 そして引き続き、『ちはやふる2』をよろしくお願いいたします!
渡邉こと乃 プロフィール 1983年6月21日生まれ。岐阜県出身。愛知県立芸術大学デザイン学科卒。 マッドハウス入社後、制作進行を経て様々な作品に演出、絵コンテで参加。 参加作品に『はじめの一歩 New Challenger』、 『青い文学シリーズ 蜘蛛の糸』、『こばと。』、 『SUPERNATURAL: THE ANIMATION』、 『魔法少女まどか☆マギカ』など。2012年放映の『BTOOOM!』でTVシリーズ初監督を務めた。 その他の監督作品に『のらのらの〜ら』がある。 |