―― 佐藤監督は、元々どういったアニメーションを得意とされていたんですか?
佐藤 巧くはなかったですけど、アクションが好きでした。アニメーター時代は動かしているほうが楽しかったです。マッドハウスの『YAWARA!』なんか、動かしていて面白かったですね。金田(伊功)さんみたいなアニメチックなアクションは、あんまり得意じゃなかったんです。どちらかというとボクシングや柔道といった、地味なリアルアクションの方が好きでした。原画枚数が多くなっても全然苦じゃなかったですし、楽しんでやっちゃうようなところがありました。
―― 今回の『HUNTER×HUNTER』はアクションの多い作品ですが、いかがでしたか?
佐藤 原作も初期の頃は格闘バトルが多いのですが、今回の劇場はその頃のイメージをふくらませて組み立てています。まだゴンもキルアも未熟な時代の話ですので、取り立てて必殺技も持っていませんでしたので……。
−− なるほど。見せ場のひとつであるゴン&キルアとウボォーギン戦で、表現として気をつけた部分はありますか。
佐藤 ウボォーギンの技である超破壊拳(ビッグバンインパクト)は設定的には殴りつけた物に念を送るのですが、今回の映画では、拳の前にエネルギーの塊を出現させる見せ方にしています。映像(ビジュアル)的に派手に見せたかったシーンでもあるので…ちょっと放出系っぽく見えてしまいましたが念弾のように飛ばしてる訳ではないんですけどね。もうひとつの技、破岩弾は銃で言うとショットガン的な見せ方ですが、原作だとビッグバンとどう違うのか曖昧に見えてる気がしたので、しっかり念にコントロールされてるように見せる工夫をしてます。
―― ウボォーギンvs.ノブナガはどうでしょうか。剣劇ですよね。
佐藤 ノブナガの「円」の表現は、難しかったですね。「円」そのものが必殺技という訳ではないので結局、構わず突っ込んでくるウボォーにどう効果があるのかは、私も分かりませんでしたが、ニュアンスとしては「後の先」的な、ノブナガの居合いが最も効果的に決まる瞬間を待っているという感じにまとめてます。剣の切っ先にエフェクトを入れているのも力強さの表現として入れてます。アニメ的には、少し前の表現なのですが、『HUNTER×HUNTER』の世界観には合ってるかなと思ってやってみました。他にも念を使った攻防はありますが、二人ともまだ未熟で、完全な形として使いこなしてる訳ではないんですよね。