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おぎにゃんと学ぼう! アニメの作り方
■第1回 作画監督って何するひと?(後編)

吉松
レイアウト段階でのチェックが必要な背景には、今のアニメが神経質になってきているという点もある。細かくなってきているというかね。

おぎにゃん
え? どこらへんが細かくなっているのにゃ?

アニメ仙人
絵柄や表現の引き出しがどんどん増えたのよ。昔は、画面があって「キャラクターがバストアップで立っています(注5)」、といったらある程度描き方が決まってたのねん。だけど今は様々な描き方がある。そして画が多様になれば当然、どういう描き方をするかの指定は細かくなってくる。あるいは、「こういう芝居を入れておきたい」という要望があれば、それをレイアウト段階で指示しておいた方が効率は上がるという考え方もある。けれど、本当に正しいのかどうかは誰にもわからないのねん。

おぎにゃん
表現の仕方が多様になったから、作業もだんだん細かくなってきたのだにゃ!

アニメ仙人
そう。さらに言うと、原画を描く人たちもみんな色んな描き方に合わせられるようになったからね。

おぎにゃん
なるほど。さすがお師匠だにゃん!

アニメ仙人
てへへ てへへへへ

吉松
あ、すごい照れてるよ? 

おぎにゃん
なんだかかわいいにゃあ。ところでお師匠、どうしてここに?

アニメ仙人
…………どろん!

おぎにゃん
えぇ!? 消えた!? 

吉松
マロミに話し掛けに行ったのかな。

おぎにゃん
それはいやにゃん。

吉松
おぎにゃん、他に質問は?

おぎにゃん
はい。アニメのエンディングテロップを見ていると、キャラクターデザインという役職が出てくるにゃ。たまに同じひとが作画監督とキャラクターデザインの両方を担当していることがあって、吉松さんも『学園戦記ムリョウ』で両方担当していたにゃん? けど、実際この2つの仕事の違いがわからないにゃん。

吉松
アニメーションのスタッフは何百人といるわけですよ。キャラクターデザインというのはその人たちに対して「このキャラクターはこういう形をしてますよ」という設計図を作る役目。さっき話に出てきたキャラクター表のことは覚えているかな?

おぎにゃん
原画さんがレイアウトを描くときに参考にするものだにゃん!

吉松
そう。実際は他にも色々な用途があるんだけどね。そのキャラ表を作成しているのが、キャラクターデザインの人なんですね。

おぎにゃん
ふむ! キャラクターを作るのがキャラクターデザインなんだにゃ。キャラクターを管理する作画監督とはビミョーに仕事の内容がちがうにゃぁ。

吉松
色んな考え方があるんだけど、僕はキャラクターデザインを担当した作品では全話の総作画監督も兼任することが多いかな。

おぎにゃん
? それはなんでにゃ?

吉松
最近は短い作品もあるけど、例えば1年間放送する作品があるとするでしょう。すると、番組の始まったときと比べると、1年後ではキャラクターの肉付きがだいぶよくなっていたりするんだ。キャラクターが成長しているというかね。だから、キャラクターデザインをして、そのまま作画にも携わっていると、キャラクターの肉付きをどんどんと膨らましていくことができるんだね。僕の場合は、キャラクター表が出来た時点では本当のキャラクターの完成図には至っていないこともあるので。

おぎにゃん
両方担当すれば、最後まで作品に関われるんだにゃ!

吉松
そうだね。出ているキャラクターに最後まで責任が持てる。じゃあ、『牙』は責任持ってないじゃないかって話になるからどうしよう(笑)。えーと、あれは総作画監督の吉田君に全てを託したんだね! 

おぎにゃん
吉松さんは『牙』で、キャラクターデザインじゃなくて、メインキャラクターというふうに載っているにゃ。あれはキャラクターデザインとはまた別なの?

吉松
ようするに、主要人物のデザインをしているということです。全員のデザインはスケジュール的にできないから、脇を固めるキャラクターに関しては他の方々にお願いしているんだよ。

おぎにゃん
ほにゃー。次の質問にゃ。原作がある場合とない場合で、キャラクターの描き方は変わってきたりするものかにゃ?

吉松
吉松さんの作画風景もちろん。オリジナルだと自分の裁量でどうにでもできる。だけど、原作ものに関しては原作者さんの元の絵があるからね。そこは意識しているけど、やっぱり僕の個性が出ちゃうから、「自分がやるとこうなりますよ」という部分に関しては原作者の方に納得していただいてます。原作者さんにやだなって言われないようにがんばってますよ(笑)。

おぎにゃん
吉松さんのテイストと原作者の方のテイストを組み合わせていくんだにゃ。

吉松
僕は、他の人の描いた絵に触れることは自分の肥やしになると思ってますよ。

おぎにゃん
日々精進なんだにゃっ。じゃ、作画監督の醍醐味って何だにゃん?

吉松
やっぱり、作品を通じて自分の絵を人に見てもらえるってことかな。

おぎにゃん
どんなときに手ごたえを感じるのかにゃ?

吉松
まぁ僕はおもしろければいいんだよね(笑)。

おぎにゃん
はてな? おもしろければ?

吉松
おもしろいじゃん!って。見ているとぐいぐい作品に引き込まれていくような。そういうおもしろいと思える作品に携われることが、作画監督でも動画でも、どの役職でも一番いいんじゃないかな。

おぎにゃん
吉松さん的におもしろいってどういうものにゃん?

吉松
ジャンルはなんでもいいんです。ただ、できれば変わったものがいいよね。アニメーションはいっぱいあるので、やはり変わったことをやっていかないと埋もれていく。他の作品とはひと味違う、変わった感じを画面に出せれば、それが喜びですね。

おぎにゃん
今関わっている『大江戸ロケット』も、そういう変わった感じなのかにゃ?

吉松
みんなでわいわいと楽しみながら作っていますよ。僕はキャラクターデザインをやってるんだけど、これは色々とおもしろいことになってます。詳しくは秘密だけど。

おぎにゃん
どきどき! キャラクターデザインも何かひとくせあるにゃ??

吉松
変わったことをやりたいと思ってて、今の段階で十分変なことになっているので(笑)、かなり不思議な作品になると思います。

おぎにゃん
楽しみにしてますにゃん! 作画監督の勉強はこれで終わりだにゃっ。吉松さん今日はありがとうございましたー! 

 

注5)バストアップ 胸から上をカメラで捕らえた構図。

みなさん、初めての講義はどうでしたか?
おぎにゃんは大変勉強になったにゃん! 次回は「原画」についてのお勉強だにゃ。お話は今回に引き続き吉松さんにお聞きします。 みんな、今日の復習をしっかりしてね!では、また再来週!!
ばいばいにゃ〜ん!
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