SPECIAL
BACK
おぎにゃんと学ぼう! アニメの作り方
■第1回 作画監督って何するひと?(前編)
今日は脚本についてのお勉強にゃん!
脚本は映画や演劇、TVドラマでもよく聞く役職だし、みんな少しは知っているかにゃ? 
今日は、アニメの脚本の書き方を聞くにゃん。教えてくれるのは無類の猫好き、金春智子さんにゃ! きっとおぎにゃんのことも大好きなはずにゃ!!

それでは始まりにゃーん!

講師プロフィール
金春 智子(こんぱる・ともこ)
3月13日生まれ 奈良県出身
大学生の時にアニメファンになり、脚本の勉強を始める。在学中に『一休さん』で脚本家デビュー。
代表作は『うる星やつら リメンバー・マイ・ラヴ』(劇場)『おにいさまへ…』『だぁ!だぁ!だぁ!』『明日のナージャ』他多数。『マスターキートン』や『花田少年史』など多くのマッドハウス作品の脚本も手掛ける。小説家としても『春菜の事件簿』シリーズなどを執筆。現在放映中の『NANA』ではシリーズ構成を担当している。リンク:ピープルファイル013へ

おぎにゃん
脚本を書くまでの流れを知りたいにゃ。

金春
まず、作品の企画が立ち上がってその制作が決定すると、電話とかメールとかで脚本の依頼が来ます。そして脚本の会議が開かれて、そこで担当プロデューサーや監督から「まず第○話をお願いします」って発注を受けるの。その時点で、シリーズ構成の人がすでに第1話を仕上げていることが多いかな。

おぎにゃん
発注会議で依頼されたら書き始める?

金春
すぐに脚本を書くわけではないの。まず、発注を受けてから1週間くらいかけてプロットを作る。

おぎにゃん
プロット?

金春
プロット 参考例あらすじって言えばいいかな。話の流れや大まかな場面展開、主なセリフを書いたもののことだよ。『デ・ジ・キャラットにょ』(注1)で依頼されたときは、こんなふうに書いたの(写真参照)。

おぎにゃん
なんとなく、ストーリーがわかるにゃ。

金春
監督やプロデューサーへ、どんな話なのかを伝えるために書くの。このときの依頼はわりと漠然としてて、私が自由に組み立てられた。だから、まずあらすじを考えて、そこへ「こんな場面入れます」、「こういうセリフを言わせる予定です」という自分の意図を具体的に書いていったんだよ。他にも、相談したいことを一緒に書いたりね。

おぎにゃん
これをどうするにゃ?

金春
プロットや脚本を読んで話し合う会議のことを、アニメ業界では「本読み」と言うんだけど、この本読みで他の人に見てもらう。プロットを見たシリーズ構成や監督が「この心情をもっと押してください」とか「このエピソードはいらないかも」など色んな意見を出してくるの。で、その会議をもとにプロットを修正して、脚本を書き始める。

おぎにゃん
どうして始めから脚本を書かにゃいの?

金春
修正がしにくいからだよ。打ち合わせ中「やっぱりこういう流れにしませんか?」と言われたとき、最初から脚本を書いていると、手直しに時間がかかっちゃうでしょ。それに、全然違うあらすじに変更になったら、せっかく脚本を書いても意味がなくなっちゃうし。本読みの出席者も、プロットのほうが、話全体の感じをつかみやすいしね。

おぎにゃん
プロットは必ず書くにゃ?

金春
原作ものだと書かない場合もあるよ。『NANA』は書いてない。

おぎにゃん
どうして書かないのにゃ?

金春
例えば『NANA』だったら、できるだけ原作を尊重して作るって最初に方針が決まってたの。基本的に、視聴者には原作と同じに見えるように、っていう前提なの。だから、動きも音もない紙に印刷されたマンガを映像にするための、細かいアレンジはしてるけど、話そのものはほとんどいじらない。

おぎにゃん
ほにゃ。

金春
プロットを書いても、原作の流れと同じになるわけだし、打ち合わせや作業が余分に増えてしまうよね。だから、プロットを立てずに「もう脚本に入って細かい部分をチェックしましょう」ということになるの。

おぎにゃん
その方が効率がいいんだにゃ。

金春
同じ原作ものでも、『シュガシュガルーン』(注2)はプロットを立てたよ。『シュガシュガルーン』の場合は、原作をベースにした話と、キャラクターを使ってオリジナルストーリーにした話があったからね。プロットを書くかどうかの判断は監督やプロデューサーが決めるんだけど、書かない作品はあまりないと思うよ。

おぎにゃん
プロットの本読みが終わったら、いよいよ脚本に入るのにゃ?

金春
人によっては、脚本を書き始める前に1度ハコ書きをする。

おぎにゃん
またおぎにゃんの知らない言葉が出てきたにゃん!

金春
脚本の下書きみたいなもので、人には見せないの。自分で話を整理するために書くんだよ。プロットよりもっと具体的にストーリーを組んで、シーン割りや重要なセリフは脚本と同じように書いていく。プロットが大きな枠組みで考えたのに比べると、細かい部分の検討をしていく作業になるよ。

おぎにゃん
なんでハコ書きっていうにゃ?

金春
シーンごとに四角い枠を書いて、そのなかに文章を書いていくからだよ。その枠が箱のように見えるから、ハコ書きっていうの。書くかどうかは、脚本家によって違う。書く場合でも、四角い枠は書かない人の方が多いんじゃないかな。私は全体的なハコ書きはしないけど、込み入ったシーンを書く時や、構成に詰まった時には、メモみたいな感じで部分的に書くよ。

おぎにゃん
で、ハコ書きを終えたら、いよいよ脚本なんだにゃ!

金春
そうだね。プロット→ハコ書き→脚本って流れがオーソドックスかな。

おぎにゃん
脚本の書き方を教えてくれにゃ。そわそわ。

金春
脚本 参考例(1)脚本って「柱(はしら)」、「ト書き」、「セリフ」の3つの要素でできているの(写真参照)。「○」印のついた1行を柱と言って、場面転換を示す。シーンが変わりましたよ、というサインで、別に「○」でなく「□」でもいいんだけど、「○」で書く人が多い。多分、手書きだった時代には「○」が1番書きやすかったからじゃないかな。

おぎにゃん
シーンごとにまず柱を立てる、とにゃ!

金春
で、地の文章のことをト書きと呼ぶんだけど、これは3字下げて書く。人によっては2字下げの場合もあるよ。そして、セリフは必ずしゃべっている人の名前を始めに書き、2行目からは1字下げて続ける。けど、最近はパソコンで設定するのが面倒で、1字下げずに書いている人もいる。ようは、ぱっと見たときに、どこがセリフでどこがト書きかわかればいいの。

おぎにゃん
ぷちこ「(手を挙げて)スリランカにゅ!」ってとこの(手を挙げて)ってのは何にゃ?

金春
これは、セリフと動作が同時ですよって意味。手を挙げてから「スリランカにゅ!」と言うんじゃなくて、2つのアクションをいっぺんにしているってこと。

おぎにゃん
脚本 参考例(2)じゃあ、×××ってのは?(写真参照)

金春
これは同じ場所での時間の経過を表すの。×××の前で、「ほっけみりん、嬉しそうにくるくる回りながら、奥へ行く。ぷちこも回りながらついていく」とあるでしょ。で、×××の後ろでは、「ぷちこ、ほっけみりんと並んで、本殿裏の庭石に腰掛けている」とある。

おぎにゃん
! どちらも同じまんまる神社の境内なのに、微妙に時間が経ってるにゃ!

金春
同じシーンのなかで、ちょっと時間が経ちました、というときなんかに×××を入れるの。

おぎにゃん
なるほどにゃ。

 

 

第6回中編に続く

注1)マッドハウス制作の、デ・ジ・キャラットシリーズ3作目。デジキャラット星のプリンセス・でじこがおもちゃ屋に居候にゃ!おぎにゃんも、どこぞの国のプリンセスになりたいにゃ〜。LINK:作品紹介
注2)安野モヨコ原作、スタジオぴえろ制作のアニメーションにゃ。魔界の次期クィーン候補、ショコラとバニラが人間界にやってきたにゃー!おいらはがぜんショコたん派にゃ!
ページの先頭へ戻る