映画公開を記念したトークイベントが10/5(金)に新宿バルト9で行われ、高坂希太郎監督、齋藤雅弘プロデューサー、豊田智紀プロデューサーが登壇。上映後に実施した熱いティーチインの様子をレポートします。
■日時:10月5日(金) 20:50~21:15
■場所:新宿バルト9 スクリーン2
■登壇(予定):小林星蘭さん(おっこ役)、三間雅文氏(音響監督)MC:前田久氏(前Q/ライター)
今回の舞台挨拶の決定後に座席は即完売し、急遽、追加舞台挨拶も決定するなど大盛況の様相を呈しました。満席の会場から盛大な拍手で迎えられ、高坂希太郎監督、齋藤雅弘プロデューサー、豊田智紀プロデューサーが登壇。監督が「本日は雨の中、足を運んでいただきありがとうございます。監督を担当しました高坂です。」と挨拶し、続けて齋藤プロデューサー、豊田プロデューサーが挨拶し、イベントはスタート。
Q. (監督へ)15年ぶりに劇場版映画の監督を務められましたが、作品が完成して順調に公開が進んでいる状況ですが、今のお気持ちはいかがですか?
高坂:「最初にこの話をいただいた時に、ちょっと抵抗感があって、児童文学というものにあまり触れてこなかったし、目の大きなキャラクターにも接点がなかったので、「なんで私が若おかみ…」という感じで引き受けたんですが(笑)、やってみたら原作も良く出来ているお話だったので惚れ込んでつくっていました。原作のファンをターゲットにつくり、何とか形にしました。」
Q. (プロデューサーのお二人へ)プロデューサーとして役割はどのような部分を担われているのか教えていただけますか?
齋藤:「僕が製作委員会とかビジネス周りのプロデューサーを担っていました。」
豊田:「マッドハウスの現場で高坂さんやTVシリーズのスタッフと一緒に現場を回していました。」
Q. 本作はテレビシリーズとの連動などいろいろ仕掛けがある作品ではあったと思いますが、どんな狙いがあったのかも教えて下さい。
齋藤:「原作は非常に人気のある作品ではあったんですが、(発売、完結から)少し時間が経っているという所もあったので、まずは『若おかみは小学生!』の映像化を盛り上げようという事で、劇場版とTVシリーズをセットで動かしました。当初は劇場版を先行にして動かしていたんですが、後からTVもあったほうがいいよねという話になり、割と軽い感じで決めちゃったんですが、同時並行で製作するというとんでもない大変な事になりました(笑) 今回は、マッドハウスさんに劇場版とTVシリーズの両方をお願いしたんですが、それぞれ違うチームでつくっているので、当然、劇場版は高坂さんなりの色が出ていて、TVシリーズは増原監督と谷監督の解釈で違う展開なので、ひとつで二度美味しい作品になっています。」
豊田:「正直に言うと、劇場版の制作がスタートした段階で、TVシリーズの話もあったんですが、具体的にどうするか決まっていなかったので、高坂監督には普通に一本つくって下さいとお願いしました。それから一年程経って、TVシリーズを動かす事になったんですが、TVのスタッフには劇場版につなげるなど考えずに、TVシリーズとして割り切ったものをつくっていきましょうと言いました。TVシリーズの方が去年の夏くらいからアフレコがスタートしていて、高坂さんには、最初のアフレコシーンだけ見ていただきました。」
高坂:「(TVシリーズと劇場版のすり合わせについては)雑談程度にはTVシリーズの監督と話はしていましたが、特に作品に踏み込んだ話というのはなかったですね。」
Q. 劇場版とTVシリーズでキャストが被っている役に関しては、どのようにキャスティングしたんでしょうか?
豊田:「キャスティングに関しては、音響制作の担当者が同じだったので、監督たちも交えて、誰にしようか話が進みました。小林さん他メインキャストはオーディションで選び、サブキャストは音響制作側から何名か提案いただいて、監督たちが人選していきました。」
Q. 公開直後、大人でも泣けるなどSNS上では大絶賛が続き、ツイッターのツイート数でも映画カテゴリーで1位をとるほどの盛り上がりぶりです。会場にも大人のお客様がたくさん駆け付けていただいています。この盛り上がりを受けて、今のお気持ちを教えてください。
高坂:「本当につくって良かったなとしみじみ思っています。原作ファンに訴求すればいいなと思っていたので、色々な方のご意見やアドバイスをいただきながらつくった、奇跡のような作品だと思っています。原作者の令丈さんのアドバイスもありましたし、吉田玲子さんの素晴らしい脚本や、プロデューサーの意見などもまとめてつくった作品でした。自分だけでつくっていたら全然違うものになっていたと思うので、本当にタイミングよく色んな人の意見を統合することができて良かったと思っています。」
齋藤:「(監督の話を聞いていて)ダビングが終わった後に、最後にシーンを付け足したいんだと言われた時は、さすがに止めました(笑)高坂さんの目指すフィルムを尊重したいなという気持ちでいました。児童文学が原作で、小学生の特に女の子に人気のある作品なんですが、男女問わず幅広い年齢層の方に受け入れられて、形にして世に送りだして良かったなと思います。」
豊田:「スタートした時は色々なスタッフに「高坂監督がこれをやるの?」と言われ、それから3年かかって出来上がって、感無量です。ありがとうございます。」
Q. (監督へ)グローリー・水領は未来のおっこをイメージしているとおっしゃていますが、当時、原作を読んでいたおっこ世代の読者がグローリーに成長したという意味なんでしょうか?
高坂:「そこまでの意図はなかったんですが、色んなお客様が来るので、統一感に欠けるという面があると思うんですね。そういう意味合いから、ある種、内容を現在のおっこ・未来のおっこ・過去のおっこにしたら統一感がでるんじゃないかという意識でつくりました。」
Q. グローリー・水領はアニメファンにすごく人気がありますが、その辺りは意識されていたんですか?
高坂:「仕掛けにうまく引っかかってしめしめと思っています(笑)彼女の色々なメイクにもちゃんと反応してくれて嬉しいですね。最初に露天風呂のシーンで眉毛をなくした方がいいんじゃないかと思ったんですが、それは女性スタッフに止められました(笑)」
Q. 温泉プリンの元ネタになったカラオケバー「フレンズ」のママの起用理由を教えてください。
高坂:「スピンオフも含めて原作ファンに訴求したいなという下心があり、当初からターゲットにしていたので作品に盛り込みました。」
Q. 原作はエピソード数も多いですが、ストーリーを選ぶ基準や泣く泣く諦めたエピソードはありましたか?
高坂:「90分厳守と言われていて、シナリオ段階では、お客さんとして秋に稲田老人が来る予定だったんですが、絵コンテの段階で入れられないという事になり、最終的には稲田老人の要素もミックスした木瀬親子が来るという事になりました。」
豊田:「最初に高坂さんがプロットを書いて、その段階では藍竜もいたんですが、作品には入らない事がわかり、なくなりました。」
高坂:「思いついたイメージをどんどん絵にしていきました。話すよりも絵に描いた方が説得力があると思い描きました。エンディングでイメージボードが使われているんですが、人前に出すための絵ではなかったので最初は反対したんですが、最後は押し切られました(笑)でも今は良かったなと思っています。」
Q. 「ホモ・デウス」の原書の表紙が登場していて大変驚きましたが、登場させた経緯はありますか?
高坂:「「サピエンス全史」で好評だったユヴァル・ノア・ハラリさんの著書なんですが、真月の未来へ思考を巡らせるというキャラクター性を表現する意味で、キャッチャーかなと思い、こっそり仕込んでおいたんです。でも、見つかって権利問題になりました(笑)」
豊田:「高坂監督に「消しましょう」と言ったら、「嫌だ」と言われました(笑)」
齋藤:「ビデオ編集を何日かやって、最終日の午前中に原作者のハラリさんから使用許諾のメールを直々にいただきました。どのシーンに出てきたか分からない方は、二度三度と見てほしいですね(笑)」
普段は聞けない制作の裏側など貴重な話も飛び出し、終始和やかな雰囲気の中イベントは進行。本編には入らなかったが、監督が追加したかったシーンの話題も出て会場は大いに盛り上がりました。最後に代表して監督が「皆さんご覧いただき本当にありがとうございました。」と駆け付けたファンへ向け、真摯な気持ちを伝え、大盛況の中イベントは終了いたしました。