おぎにゃん
シリーズ構成の人って何してるんにゃ?
金春
シリーズ構成は、作品によってかなり作業内容が変わるから、何してるか答えるのがすごく難しいの。ケースバイケースって覚えてくれれば、それでいいです。じゃ、また!
おぎにゃん
終わり!? もっとしっかり教えてにゃん!
金春
おおざっぱに言うとね、脚本全体の取りまとめ役かな。シリーズ構成の人は、まず最初に監督やプロデューサーと作品全体の大まかな流れを相談して、出てきた意見をまとめてシリーズ構成案というものを組むの(写真参照)。これは池田眞美子さん(注1)が書かれた『デ・ジ・キャラットにょ』のシリーズ構成案。これをもとに、脚本家に各話のシナリオをそれぞれ発注するんだよ。
おぎにゃん
金春さんが脚本を担当した回には、「何となくポエムっぽく。ぷちこが小さな幸せを探す、街巡りですかね。」と書いてあるにゃ。わりとおおざっぱだにゃ……。
金春
どれくらい細かく書くかは作品やシリーズ構成の人によってまちまちだし、同じ作品でも回によってちがう。私が担当した23話-Bパートは1行しかないけど、その前の21話はAパート・Bパート両方とも6〜7行くらい書いて説明してるでしょう。さらに、発注会議のときに、シリーズ構成や監督からの口頭での説明が加わるの。
おぎにゃん
だいたいどんな作品も1〜7行くらいの分量を書く?
金春
私が他社でシリーズ構成をやっている『レ・ミゼラブル 少女コゼット』(注2)では、1話につき1ページは構成案を書いているよ。それは作品の性質も関係していて、ストーリーが続きものでシリアスだと構成案は細かくなる傾向があるよ。「こういうところに注意して書いてください」っていう補足が増えるし、前後のつながりもわかるようにしなきゃいけないからね。逆に、『デ・ジ・キャラット』シリーズみたいな、単発の話が多くてあっけらかんとした作品では、構成案もそこまで細かく書かないかな。
おぎにゃん
作品によりけり、とにゃ。
金春
あと、『デ・ジ・キャットにょ』の構成案は読んでわかる通り、けっこうくだけた文章になっているよね。それは作品の特徴を踏まえた上で、池田さんがわざとハジけた感じに書いているからなの。その方が、脚本家のノリがよかったりするし。
おぎにゃん
シリアスな話だとまたテイストが違ってくるんだにゃ。
金春
シリーズ構成案を書いたら、次にどの脚本家に何話を発注するかということになるんだけど、これは監督やプロデューサーが決める傾向が強いかな。シリーズ構成の人は主に、上がってきた脚本をチェックして、監督やプロデューサーと一緒に意見を言う。だから、基本的に本読みには毎回出席するよ。
おぎにゃん
シリーズ構成の人が第1話をやることが多いのはどうしてにゃ?
金春
脚本家は発注を受けてから現場に入るけど、シリーズ構成の人は1番最初から作品に携わっているでしょう。だから、作品の傾向や方向性が掴めていてすぐに脚本が書ける、というのが理由のひとつ。もうひとつは、脚本家に「こういう雰囲気です」、「こんな感じでお願いします」って伝えるため。脚本家としても、言葉で色々言われるより、実際に脚本を見せてもらった方が書きやすいんだよね。
おぎにゃん
浅香さんが言ってた、監督が第1話の絵コンテや演出をやるのと似た感じにゃん!
金春
だからシリーズ構成の人が第1話を書いて、それから脚本家に入ってもらうケースが多いわけ。
おぎにゃん
シリーズ構成案って、はじめに最終話まできちんと書くのにゃ?
金春
それも作品によりけりだよ。1クール(注3)程度なら最終話まで構成することが多いかな。『だぁ! だぁ! だぁ!』(注4)では、全体としての流れだけおおまかに組んでおいて、途中の話数に関する詳細は決めない状態でスタートした。放映が進むにつれて5本ずつとか徐々に構成案を書いていったんだよ。
おぎにゃん
にゃ〜る。放送途中で、作品の方向性を変えたいときはどうするにゃ?
金春
『だぁ! だぁ! だぁ!』は、原作が連載中だったから、終盤の具体的な展開はその時期に近づくまで誰にもわからなかった。それもある意味方向性を変えていることになるよね。あと『明日のナージャ』(注5)ではある程度話数が進んだ時点で、今後の方向性みたいなのを監督やプロデューサーと一緒に何時間もの会議を何度も何度もしたよ。ピザ頼んだりお弁当食べたりしながら(笑)。
おぎにゃん
うひょー楽しそうにゃ!
金春
深夜とかの長時間の会議だから大変だったよ。『明日のナージャ』は、作品の前半では1話完結に近いかたちだったのが、終盤に向うあたりから連続ものになっていったの。
おぎにゃん
放映が延びたり打ち切りになったら、それが決まった時点でまた構成案を書きなおすのかにゃ?
金春
そういう可能性があるときは、初めから最終話あたりの構成はあいまいにしておく。あと、放映の都合なんかで、残り3本の予定が2本で終わらせなきゃいけなくなって、プロデューサーや監督と「じゃあどういうふうに組みなおしましょうか」とか「じゃあこの要素ははずして……」みたいな相談をすることもある。
おぎにゃん
そ、そうにゃのか!!!
金春
シリーズ構成でポイントなのは、制作体制によって仕事内容が変わるってこと。基本的に本読みは参加するといっても、実際は出席しない場合もあるし、脚本のチェックに関わらないことだってあるんだよ。
おぎにゃん
がーん!
(第7回中編に続く) |