SPECIAL
BACK
おぎにゃんと学ぼう! アニメの作り方
■第8回 忘れちゃいけない!色彩設計のお仕事にゃ!!(前編)

さてさて、今日は色彩設定についてのお話を聞くにゃ。
アニメーション制作でも、今まで勉強してきた演出や原画や脚本の作業とはまた別ラインのお仕事になるのにゃ。
詳しいことは、色彩設計の橋本さんに聞くにゃー。

それでは橋本さん、よろしくお願いしますにゃ。

講師プロフィール
橋本 賢(はしもと さとし)
1972年1月28日生まれ 東京都文京区出身
今 敏監督の作品をはじめ、多数のマッドハウス作品の制作に携わる。『PERFECT BLUE』『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』や昨年末に公開された『Paprika』などの劇場作品に加え、『X』や『妄想代理人』といったTVシリーズでも色彩設計を担当。現在は、好評放映中の『DEATH NOTE』で活躍中。詳しくは、コラムMADHOUSE PEOPLE FILE FILE029

おぎにゃん
色彩設計って、いったいどんなことをしているにゃん?

橋本
色彩設計とは、キャラクターの色を決めるお仕事だよ。原画や動画がアニメーションの動きを作っていくのに対して、色を作っていくセクションだね。

おぎにゃん
色を決めて、塗って?

橋本
実際に動いている絵に色を塗る作業をするのは、色彩設計とはまた別の「仕上げ」の人たちになる。色関係の仕事は、色彩設計・色指定・仕上げの3つのセクションに分かれているんだ。

おぎにゃん
そういえば、エンディングテロップに仕上げって役職が出てくることあるにゃん。

橋本
本来、色彩に関わる仕事内容の人たち全部を総じて仕上げって呼んでいたんだけど、今は主に狭義で「実際にペイント作業をしている人たち」を仕上げって呼ぶことが多い。あるいは、デジタルペイントと表記したり。最近では、この作業の八割方は海外に依頼しているね。

おぎにゃん
なるほどにゃ。仕上げと大きく括ったなかの色彩設計という役職なのだにゃ! それで、色彩設計は、いつからどんなふうにアニメーション制作に関わっていくのにゃ?

橋本
まず、企画が立ち上がって監督や脚本家たちでシナリオの構成なんかを作るでしょう?その段階ではまだ色彩設計は参加しないんだ。その次に、キャラクターデザインの人がキャラクターを起こすんだけど、そのキャラクターデザインが決まったあたりから制作に加わる。キャラクターの絵には影やハイライトが入るんだけど、どんな雰囲気の作品にするのか、その分量をどうするか、コントラストは淡めにするのか、といったことをメインスタッフの方と話し合うんだ。

おぎにゃん
それが、一番最初のお仕事にゃんだな。

橋本
そこでの話し合いをもとに、キャラクターの色を決めていく。これが一番メインの仕事になる。まず最初にノーマル色を決めるよ。

おぎにゃん
ノーマル色? じゃあアブノーマル色もあるのにゃ??

橋本
アブノーマルなのはおぎにゃんの頭ン中だけでしょう(笑)

おぎにゃん
ぐ……、爽やかにキツイことを言われてしまったにゃ……。

橋本
ノーマル色っていうのは、キャラクターのベースになる色のこと。昼間の普通のライティング状態での色だよ。まずそれを決めて、それから次にシーンごとの色を考える。夕方のシーン、夜のシーン、室内のシーン、と色々な場面があるので、それぞれの空間に馴染むようにノーマル色をベースに新しくカラーを作っていく。

おぎにゃん
ノーマル色のままじゃダメにゃ?

橋本
ノーマル色のままだと、空間に浮いてしまうんだ。詳しくは後で説明するね。

おぎにゃん
うにゃ。ノーマル色は、作品によって違うのにゃ?

橋本
違うよ。どういう風に違うかっていうと………、あれ? おぎにゃんってモノクロ?

おぎにゃん
ドキ!

橋本
よく見ると、色がついてないね。

おぎにゃん
うぅ……、実はおぎにゃんモノクロにゃ……。しくしく(涙)。

おぎにゃん初カラーにゃ!!! ノーマル色にゃ橋本
うーん、おぎにゃんは元気で可愛らしくてちょっとおバカだから、こんな色かな(イラスト参照)。

おぎにゃん
にゃ! おぎにゃんがカラーになったにゃ!!

橋本
よかったねぇ。

おぎにゃん
ありがとうにゃ。これで、堂々と道を歩けるにゃ!!


橋本
今、おぎにゃんのイメージからノーマル色を決めたけど、これがおぎにゃん主演のギャルアニメーションだったらまた色合いが変わってくるよ(イラスト参照)。

コギャル色おぎにゃんおぎにゃん
にゃ! おぎにゃん、コギャル!? なんか元気よさげにゃん。

橋本
魔法少女ものやギャルものだったら、ノーマル色の髪の毛を赤くしたり青くしたり、全体としても彩度を高くして、わりと派手めな雰囲気にするんだ。

おぎにゃん
ハジけた印象にゃ。


橋本
それが、シリアスな作品だったらトーンをおさえた感じにする(イラスト参照)。

大人色おぎにゃんおぎにゃん
おぎにゃんがちょっと大人っぽくなったにゃ。

橋本
例えば『DEATH NOTE』なんかは色味を落ち着かせるタイプの作品だね。このあたりは、作風を踏まえて監督とディスカッションして決める。マッド作品は、わりと落ち着いた色味のリアル系の作品が多いかな。

おぎにゃん
『DEATH NOTE』は原作があるけど、原作モノの場合はカラーページの色味を参考にしたり?


橋本
特に『DEATH NOTE』の場合は、画集も出ていたからね。視聴者もその雰囲気を求めてくると思ったので、ベースのノーマル色は基本的に原作コミックや画集の色味に近づけた。で、作品内容的にリアル系なので、全体的にトーンをおさえめで作る。

おぎにゃん
原作者から色の指定があることは?

橋本
まず、ノーマル色をあげた段階で原作者に渡して確認を取る。そこでOKをもらうかたちになるよ。

おぎにゃん
じゃぁ『X』のTVシリーズ(注1)だったらCLAMPさんに確認を取ったにゃ?

橋本
あれは先に劇場版があったからそれほど問題はなかったけど、一応見せたよ。それにCLAMPさんの原作自体にカラーが多かったし。あと、『DEATH NOTE』もそうだけど、原作の絵自体がキャラクターのカラーを掴みやすいものだった。同じコミックでも色味がわかりやすい絵とわかりにくい絵というのは、実際にあるからね。

おぎにゃん
そ、そうにゃのか!

橋本
で、そんな流れでベースカラーを決めたら、次にシーンカラーを作る。

おぎにゃん
シーンカラーは、夕暮れ時とか室内とかの背景の色を決めてから作るのにゃ? それとも、シーンカラーを作ってから背景の色を決めるのにゃ?

橋本
シーンカラーは、まず美術と打ち合わせをする。そして、美術から「ボード」という各シーンごとのキーになる絵をあげてもらい、その絵の色に合わせてキャラクターの色を決めていく。ボードにキャラクターを載せ「どのくらい背景の色に馴染ませるか」を考えていくんだ。

おぎにゃん
それも作品によって、判断基準は変わるのにゃ?

橋本
もちろん。例えば魔法少女ものみたいな作品だったら、逆に馴染ませ過ぎると肌色などが汚く見えてしまうので、若干色を寄せるくらいに留める。これは作品全体の雰囲気にも関わってくるから、細かい作業だけど大事なこと。シーンごとに色を変えることを「色変え」というね。

おぎにゃん
昼間のシーンから夕方のシーンで色変え、屋内から屋外で色変え……って感じ?

橋本
近年のアニメーション作品では、リアリティのある作品で色変えのない作品はないと言っても過言ではない。一部のギャグものや魔法少女ものは例外だけどね。特に劇場作品だと、ぶっちゃけノーマル色を一度も使わない、なんてこともある。カットごとにどんどん色変えをしてくからね。

おぎにゃん
聞いた話によると、色変えの多いアニメーションは豪華に見えるとか!?

橋本
お仕事中の橋本さんにゃ!素人目に見ても、明らかに違いはわかるよ。「どのくらい厳密に色変えをするか」は監督や作品によって違うけれど、『DEATH NOTE』は割と色変えの多い部類に入るねぇ。


おぎにゃん
多いってどのくらいにゃ?

橋本
シーンごとに全て色変えしてるくらい。話の展開が早い作品だからという理由もあるけど、監督の要望があったりもして、一話あたりで15〜20回は色変えをしている。普通のTVシリーズだったら5回くらいなんじゃないかな?

おぎにゃん
にゃーん! めっちゃ、多い!!

橋本
例えば2カットしかないシーンで暗がりにキャラクターが立っていたら、時間にしてほんの5秒くらいなんだ。それでも変えるから。まぁ大変だよね(笑)

おぎにゃん
東京アニメアワードで優秀作品賞に選ばれるわけにゃ!(注2)

 

 

第8回中編に続く

注1)CLAMPさん原作のサイキックアクション巨編にゃ。劇場版が先に制作され、TVシリーズはより登場人物たちのドラマを深く掘り下げたつくりになってるのにゃ!

注2)『DEATH NOTE』は、東京国際アニメフェア2007開催の「第6回東京アニメアワード」ノミネート部門でテレビ部門優秀作品賞を獲得してるにゃ。おぎにゃんもいずれ受賞するから楽しみに待っててにゃ!
ページの先頭へ戻る