おぎにゃん
色彩設計のお仕事はだいたいわかったにゃ! 次は、色指定のことを教えて欲しいにゃ!
橋本
わかりやすく言うと、色彩設計を監督としたら、色指定は各話演出的な役割。
おぎにゃん
…………にゃ?
橋本
あぁ! おぎにゃん、わかってないっぽい!
おぎにゃん
もっと、詳しく教えてくれにゃん。
橋本
なんか偉そうだし! 仕方ないなぁ〜。色彩設計は、作品全体を見てバランスを取っていたでしょう。それに対して、色指定は、各話数ごとに担当する人がいるんだ。
おぎにゃん
じゃあ、色彩設計が「キミ、第5話の色指定をやってくれたまえ」って言うのにゃ?
橋本
そんな、偉そうな言い方はしないよ(笑)。色彩設計が、キャラクターのノーマル色やシーンカラーを決めるんだけど、さすがに全部の話数の細かい部分まで、気をくばるのは難しいよね? なので、各話の色の担当者として、色指定さんを立てるわけ。色指定さんに色のデータを渡して、各話のシーンそれぞれの色を指定していく。だから各話演出と似ている、と言ったんだよ。担当した話数を責任もって仕上げないといけないからね。
おぎにゃん
実際にペイント作業をするわけではにゃい?
橋本
実際にペイントをするのは、仕上げの人たち。色指定は仕上げさんに、どの色でペイントするのかわかりやすく、指示を入れる人だね。
おぎにゃん
色彩設計:色決め→色指定:決められた色を各話ごとに指示→仕上げ:指示された色を塗る って感じだにゃ!
橋本
そうだね。TVシリーズのクレジットを見ると、色彩設計は毎週同じ人の名前がクレジットされるけど、色指定は話数によって変わっていたりする。
おぎにゃん
実際には、どんなお仕事をしているにゃ?
橋本
まずは、演出と作画監督がチェックを終えた原画に、仕上げさんたちにわかるように「この色を塗ってください」って指示を入れる。よく原画に赤ペンでWとかCとか書いてある紙があるでしょう。
おぎにゃん
よく、裏紙で見かけるにゃ。こんなのだにゃ(イラスト参照)。
|
▲上の画像にマウスを合わせるとペイント後の画像もご覧いただけます。 |
橋本
それが、原画に色指定した状態のもの。
おぎにゃん
でも、色指定されてない部分もあるにゃ。
橋本
「nomal oginyan」と空白に書いてあるでしょ?
おぎにゃん
あるにゃ。
橋本
それが「“ノーマル色“の“oginyan”という指定で、ペイントしてください」って意味なの。おぎにゃんのノーマル色は色彩設計がすでに作ってデータになっている。その色の通りに塗るって意味で「normal oginyan」と指定しているんだよ。
おぎにゃん
ほにゃ〜。
橋本
口のなかとか、目のなかとか、わかりづらい部分には補足で説明を入れたりする。それで今回は、口のなかに「舌」と描いて「歯じゃなくて舌ですよ〜」とわかるようにしてる。
おぎにゃん
今はデジタル化してるから、ノーマル色データから、色をひぱってこれるんだにゃ。
橋本
そうだね。で、この色指定した原画が、動画に回って、仕上げに回ってくる。そこで仕上げの人が色を入れる。そうしたら、色指定はあがってきたペイントデータをチェックして、色に問題があればリテイクを出すし、OKならそのシーンの色指定の作業は終わる。時間がないときはどうしても仕上がりが荒れてしまうので、そのあたりをフォローして直すのも、色指定の仕事だね。
おぎにゃん
よく、原画に、赤い線や青い線が入っているけど、あれも色指定の方法なのかにゃ?
橋本
もしや、おぎにゃんの言ってるものは影付けでは?(イラスト参照)
おぎにゃん
そうにゃ! これは、色指定じゃなかったんだにゃ……。
橋本
これは、原画マンが影やハイライトの入り方を、指定してるものなんだ。
おぎにゃん
どうして何種類も色があるにゃ?
橋本
おぎにゃんみたいな、単純で影があるのかないのかわからないような場合は、一色でいいけど、
おぎにゃん
なんか、バカにされたようにゃ……
橋本
そんなことないよ。みんなおぎにゃんみたいだったら、作業も楽チンだな〜って意味だよ!
おぎにゃん
そ、そうにゃのか。
橋本
でも、クオリティーを追求するうちに、どんどん影付けが濃くなる作品もある。例えば、川尻監督(注1)の『VAMPIRE HUNTER D』(注2)とか、影があって、そのなかに濃い二号影があって、さらに輪郭のふちにはハイライトで明るい部分があったりする。そうなると、色鉛筆の色を変えないと、何の指定の線なのか、わかんなくなっちゃうからさ。(イラスト参照)
おぎにゃん
ちなみに、その線の色は決まりがあるにゃ?
橋本
確かマッドハウスでは、ハイライトを赤で描いて、一号線は青、二号線は緑で描く。スタジオによって違うよ。
おぎにゃん
それは、色指定ではなく、原画マンが描くんだにゃ。
橋本
影付けは原画マン。色指定は、色指定がやるんだ。
おぎにゃん
じゃあ、原画マンの指定している影付けが色指定からしたら、変だぞってときもあるにゃ?
橋本
それは、基本的にないね。なぜなら、原画マンもシーンごとに作画打ち合わせしているからね。そのときに、動き方だけではなく、「このシーンは、逆光気味にお願いします」とか「足元に光源があるから、フットライト光源のように表現してください」とか指定を受けている。さらに、影付けの仕方も、レイアウトチェックの段階で、演出や作画監督が見てるから、変だったらリテイクになるし。だから、色指定のところに原画がくる段階で「これは違うじゃん」みたいなことはない。万が一あったとしても、打ち合わせで誰かが勘違いしてたとか、そういった場合だと思うよ。
おぎにゃん
なるほどにゃ。じゃあ、色指定は原画がアップし始めた頃から、製作に加わるのにゃ?
橋本
そうだね。TVシリーズなら、だいたい納品の2週間くらい前からかな。
おぎにゃん
けっこう、キワどいにゃ……。
橋本
あんまり前だと、モノ(原画)自体があがってないから(笑)。
おぎにゃん
もう色指定に入らないとヤバいけど、原画がまだあがってない……!なんてときはどうするにゃ?
橋本
そういうケースは、レイアウト段階のものに色指定を書き込む。でもレイアウトだと、さすがにかっちり書いてないから、小物とかだと色指定が出せない。例えば、TVのリモコンが小物で出てくるカットで、レイアウト段階では「なんとなくリモコンってわかる絵」という程度にしか描いてない場合がある。それだと、リモコンのボタンは何個あって、どうついているのか、どんな輪郭線をしているのか、わからない。そういう状態では色指定に入ることは無理なんだ。
おぎにゃん
基本的には、レイアウト状態では色指定は無理にゃんだな。
橋本
かたちのはっきりしない小物などは、原画を待つ。ただ、どうしても時間のないときは、キャラクターだったらレイアウト段階で、色指定に入ることもあるよ。なぜかというと、TVシリーズだったらメインキャラクターはそれまでも何度も登場しているから、ある程度原画の予想がつくんだ。例えば『DEATH NOTE』で、月がバストショットでしゃべるシーンの原画が、あがってなかったとする。でも、月は主人公でほぼ毎回登場するし、同じようなバストショットシーンは今までに何回かある。だからそのシーンの背景色を考えつつ、レイアウトに色指定を打ち込むことは可能なんだ。
おぎにゃん
経験がものを言うんだにゃ!
第9回後編に続く |