おぎにゃん
『DEATH NOTE』で、はたさんは「録音調整」となっているにゃ。
はた
それが「ミキサー」なんだ。呼び方が違うだけだよ。
おぎにゃん
なるほどにゃ。で、アフレコ中はどんなお仕事をしているのかにゃ?
はた
現場にはたくさん機械があったでしょう(写真参照)。ひとつひとつの装置の説明をするときりがないんだけど、ようはこの装置で役者さんの芝居を録音しているんだ。音響監督は全体を見る役目で、実際に録音作業をするのがミキサーになる。
おぎにゃん
録音スイッチをポチっと押せばいい、ってわけじゃないのにゃ?
はた
そんな簡単なことじゃなくて、経験値や知識が必要な作業だし、常に現場に対応していないといけない。例えば、『DEATH NOTE』だと、少なくて7〜8人、多いと20人の役者さんが3本のマイクを使って演技するでしょう。単純に考えて1本のマイクに2人〜5人が集まることになるよね。
おぎにゃん
そうなるにゃ。
はた
どの役者さんがどのマイクを使うかは、テストの流れのなかで決まっていくんだけど、まず誰がどのマイクを使っているのか、その場で見て覚える。そして、役者さんの芝居に合わせて、リアルタイムで音量のバランスを取っていくんだ。これは、アフレコ中にミキサーが行っている一番基本的なことかな。
おぎにゃん
アフレコ中はそうとう臨機応変に対応しないとなんだにゃ。
はた
何十人も役者さんをキャストしていると、たまにテストと本番で入るマイクが違う、ってこともある。ある種のアクシデントだね。そうなると、本番中に段取りが変わってきちゃうんだけど、でもそこはリアルタイムで対応していかないといけない。
おぎにゃん
ストップしてもらわにゃいの?
はた
それは役者さんのテンションや気持ちの流れが止まってしまうからできるだけ僕がアドリブで対処するようにしてる。
おぎにゃん
音量のバランスを調節するだけでも、なかなか大変だにゃ。
はた
慣れてくると、役者さん一人一人の声の大きさ、あるいは男性と女性でも違いがあるからそれを考えつつ、均等に録音ができる。あと、芝居としての強弱も当然ある。だから、台本をしっかり読み込んでくることは大切。例えば、「このやろー」というセリフはものすごく大きな声で怒鳴るのか、それともうちに込めて感情を溜めた状態で言うのかは台本を読み込んでないとわからないからね。
おぎにゃん
後から、編集作業で音を大きくしたり小さくしたりできる?
はた
それはもちろんできるよ。
おぎにゃん
じゃあ、何でアフレコ中に音量にそこまでこだわるのにゃ?
はた
編集作業の柔軟性を高めるため、という理由がある。もう一つは、アフレコ中に音響監督や監督がスピーカーを通して聞いているとき、できるだけいい状態で耳に入るようにするため。音量が大きかったり小さかったりすると、その印象がお芝居のイメージに繋がってしまうケースもある。だから、公平に判断できるようにミキサーは音のバランスを調整する必要がある。
おぎにゃん
ほにゃほにゃ。他にどんなことをしているにゃ?
はた
細かい機械的なことが色々とある。わかりやすく言えば、ベストな音で録音するために色んな機械を使って調整しているんだ。マイクの音量調節もそうだし、他には叫んだときに音が割れないよう事前にセッティングしたり。そういった、使う機材のチョイスや事前のアレンジもミキサーの仕事のひとつだね。
おぎにゃん
なるほどにゃ。ミキサーはどんな時期から作品の制作に関わっているのにゃ?
はた
それは、ミキサーがスタジオのハウスエンジニアとして働いているかフリーランスでやっているかでも変わってくるところなんだ。作品の立ち上げ段階では主にスタジオの技術スタッフが動いていて、ミキサーは実際に作品が動き出し、アフレコやダビングといった実作業に入ってから参加することが多い。
おぎにゃん
はたさんも?
はた
僕は作品の企画段階で声をかけてもらったり、音響サイドのスタッフリングの段階で誘ってもらったりと、わりと早い段階から参加することが多いかな。
おぎにゃん
「途中から入ってください」とか「1話だけお願いします」みたいなことはないにゃ?
はた
それはあまりない。制作の事情でピンチヒッターとして参加、ってことは稀にあるけど、基本的にはミキサーはタイトルで参加して、そのタイトルを責任持ってこなしていく。
おぎにゃん
基本的には、ひとつの作品にはひとりのミキサーなんだにゃ!
はた
演出家によって作品の雰囲気が変わるように、ミキサーの交代は、作品の色が変わる大きな要因のひとつ。作品のトータル感を出すためには、やはり同じスタッフで通してやった方がいいんだよ。
(番外編その3 後編に続く) |