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Interview

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――お二人の経歴からうかがえればと思います。増原さんの入社はいつごろだったのでしょうか。

増原 97年だったと思います。当時知り合いだったアニメーターが「マッドハウスはいいぞ。大手でしっかりしてる。保険証も作ってくれるよ」みたいな話をしてくれてね。採用面接をしていないか確認するために朝方電話したんです。
そうしたら、マッドハウス創立メンバーの丸山正雄さんが電話に出て。「じゃあ今からおいで」って言われて。「今から? え? 履歴書書かなきゃ」となったんです。上京したばかりだったのでよくわからないけど、阿佐ヶ谷に行けばいいんだなと思って。当時マッドハウスが入っていた芝萬ビルに行ったら丸山さんはいなくて。別の方に「免許持ってる? 親御さん反対してない? じゃあ明日の朝10時ね」と言われて、受かりました。

――ずいぶんあっさりしていますね。

増原 当時はね(笑)。で、次の日行ったら誰もいないわけです。そうしたら電話が鳴るから「僕、今日から出社で何もわからないんです。伝言しておきます」と応対して。そんなメモだけがどんどん増えていって。
そうしたら、足早な人がダダダって入ってきたので、「僕どうしたらいいんでしょうか」と半泣きで聞いたら「あっちのビルに丸山さんがいるから」と教えてもらえたんです。そのとき話したのが、じつは片渕(須直)さんで。朝から仕事する数少ないクリエイターで、午前中マッドハウスで、午後からは日本アニメーションで仕事をしていらしたんです。

――片渕さんは当時『あずきちゃん』ですか。

増原 そうです。各話でコンテ・演出をやっていました。で、別ビルに行ったら、植木に水をやっているサンダルで短パンのおじいちゃんがいて。僕、用務員の方かなと思っていたんですよ。「お茶でもどうぞ」って言われて(笑)。丸山さんどこにいるんだろうと思いながら。で、「そろそろみんな来ている頃だから戻ってみれば」と去り際に、「申し遅れましたけど、丸山です」って言われたんです。

――それは思い出に残る入社ですね。

増原 50周年とあまり関係ないですけどね(笑)。

渡邉 いや、でもマッドハウスの歴史を感じるエピソードです。

――(笑)。渡邉さんの入社は?

渡邉 2007年だと思います。でも普通の会社だと思っていました。立派なビルの中に入っていて。

――渡邉さんの入社時期だと、もう芝萬ビルではなく、移転したあとのアメックスビルだったんですね。

渡邉 だからすごい会社だと。面接も普通でしたね。

――マッドハウスの作品はそれまで視聴されていたのですか。

渡邉 見ていました。NHK衛星第二放送で、マッドハウス作品がたくさんやっていたじゃないですか。『カードキャプターさくら』とか『あずきちゃん』とか。それにどっぷりはまってたんで。

――入社当時はどういう役職だったのですか。

渡邉 『メイプルストーリー』です。設定制作でした。いしづか(あつこ)さんの下でやっていましたね。

――なるほど。その後もいしづかさんとはずっと一緒に作品を制作されていますよね。お師匠さんはいしづかさんになるのですか。

渡邉 そうだと思います。でも師匠というよりお姉さま的な……。

増原 お姉さま(笑)。別に師匠は1人じゃなくてもいいんだよ。3、4人はいるんじゃない。

渡邉 まあ、そうですけど。最初に演出やったときも、いしづかさんのもとで色々教えてもらって。で、その後は、『はじめの一歩(New Challenger)』で宍戸(淳)さんが監督をされているときに、最終話(Round26「NEW CHALLENGER」)の演出をやらせてもらって。これが一本立ちだったのかなと思います。
あとは社内だと浅香(守生)さんの作品もやることが多いので。いつも勉強させてもらっています。増原さんの作品でいうと『こばと。』で演出をやらせてもらっていますよね。

増原 そうだ。最終話(第24話「あした来る日…。」)もやってくれていた。

渡邉 ひたすら(タイム)シートを直す人でしたけど。あと、銀杏の葉っぱがたくさん散っている回(第13話「…天使と守り人。」)の演出をやった記憶があります。

――マッドハウスって、そういう散り物のイメージがありますね。

渡邉 確かに、自分が入るまではそんなイメージありました。CLAMP作品はだいたい散っていますよね(笑)。

増原 桜バンクがあったんですよ。いろんな作品で、羽も散っていましたね。

渡邉 そんなふうにお世話になった方々が何人かいるのですが、作品的にはいしづかさんが一番お付き合いがあったと思います。

増原 演出面で学んだことは何かないの。

渡邉 (いしづかさんは)あまり手の内を明かさないんですよ(笑)。

増原 俺は浅香さんのコンテを見ていると、横顔は9:1のアングルがお気に入りなんだなと思って。7:3がスタンダードなのですが、奥の目がチラッと見えるぐらいにするんです。その繊細な感じがすごく浅香さんの味になっているんですよ。

渡邉 その監督ごとに好みがありますよね。

――では、演出面以外で、いしづかさんに教えてもらったことで、印象に残っていることはありますか。

渡邉 「なんでもやる」。

増原 ああ、たしかにね……。いしづかちゃんは、版権に特効(特殊効果)かけているからね。

――え? 監督がですか?

渡邉 いしづかさんの作品のときの版権は、いしづかさん自身が特効をかけてます。

増原 普通しないからね(笑)。そういうパッションがあるんだよね。

渡邉 一番熱いから、いい意味で巻き込まれていきますね。

――監督としての姿勢ですね。

渡邉 そうですね。一方で最近は働き方改革もあるので、あまり周りに対して時間的には無理強いはできないですよね。私本人も家庭があって、朝イン夕方アウトですし。ただ、そうであっても監督が率先してやると周りはついてきてくれるなとは思います。


渡邉こと乃:監督/絵コンテ/演出
2012年、『BTOOOM!』にて初監督。絵コンテ・演出として、『ちやはふる』『俺物語!!』『ノーゲーム・ノーライフ』などに参加。いずれの作品でも監督の右腕として活躍、マッドハウス作品のクオリティを支える。本文中話題となっている『金の国 水の国』では監督を務めた。

増原光幸:監督/絵コンテ/演出
数多くの作品で絵コンテ・演出・助監督として参加。2008年に『チーズスイートホーム』にて初監督。以降『こばと。』『BLADE』『しろくまカフェ!』『ダイヤのA』『若おかみは小学生!』などの作品で監督を務めた。