Interview
――増原さんが初監督を務められた作品はなんだったのですか。
増原 『CLAMP IN WONDERLAND』で、現場の取り仕切りはやったのですが、正式には『チーズスイートホーム』が初監督です。『チーズ』は原作単行本の本数がシリーズの枠に対して少なくて、オリジナルが多かったんですよ。そう考えると僕は初監督のときから、ライターさんと一緒にお話を考えることが多かった気がします。その後に監督をやった『こばと。』も同じような状況で。あのときは(CLAMPの)大川七瀬さんも入っていらしたし、面白かったですよ。それこそ渡邉さんがやった銀杏の木の話もオリジナルだと思う。
渡邉 そうですね(笑)。
――ちなみに、マッドハウスのお話の作り方って、意識されたことはありますか。
増原 どうかな……。印象に残っているのは「ならでは」ですかね。例えば海に行くんだったら、それに纏わる話でなければならない。そうじゃないと、海を出す意味がないだろうと。引っ込み思案なキャラクターがゲストで出てくるなら、引っ込み思案「ならでは」の話にしろ。
――特徴をちゃんと活かした話作りをということですね。
増原 脚本制作にあたって基本中の基本なのですが、マッドハウス作品はかなりそこを意識していたと思います。
――では、マッドハウス「ならでは」の演出法というと、どんなものが思い浮かびますか。
増原 Q.T.BとQPAN(笑)。
――割とカメラを振ったりする作品が多いと。
増原 まあ、構造上の制約でもあったりしますからね。作画の省略、負担を減らすためでもあるので。ただそれは突き詰めた場合そうとも取れるという話で、実際は演出的に有用だからやっているんだと思います。
――スローはいかがですか。増原さんが監督された『ダイヤのA』や、今回アニメーションスーパーバイザーとして参加された『金の国 水の国』でも効果的に使われていましたよね。
増原 ああ。鳩のシーンで使ったよね。
渡邉 そこは自分が(コンテを)切りましたね。それはどちらかというと原作で受けた印象をアニメーションに落とし込むならこうかなと思ってやったんです。
増原 漫画の大ゴマの尺感って、読者に委ねられているじゃないですか。アニメーションは時間軸があって、その尺感が固定されちゃうから。例えば、漫画では気合を入れるためにビンタするカットを、見開きでやっているとする。でもそれを映像としてリアルタイムでやってしまうとペチーンで終わっちゃうから。だからそこを「ペチーン、ペチーン、ペチーン、ペチーン」って、繰り返してみたり、残響音を残したりするわけです。
渡邉 でも流行り廃りはあるんで(笑)。昨今はあまりスローが流行らないので、使い所は選んでいます。