Interview
❼今後は「枷が外れた」作品も
――今後、マッドハウスでどんな作品に関わっていきたいですか。
濱田 マンガ原作だと、原作を見ながらその通りに描くのが理想になってくるので、それがない状態で一回やってみたいですね。
――というと、ご自身のオリジナルキャラクターデザインをやってみたいと。
濱田 はい。そうすると絵に縛られず、演技のほうでもっと広げられるのかなと。
――やはり芝居志向なんですね。ちなみにこれまでマッドハウスで手がけてきた作品で、一番ご自身が芝居について満足いったと思えた作品はどれになりますか。
濱田 毎回やりきった感はあるんですけど、パッと思い出すのは『バーディー』ですかね。合格発表を見て、主人公のつとむが喜んでいるシーンをやっているのですが。
――ああ。バーディーのアクションではないんですね。
濱田 日常芝居なんです。そこはハマった気がしたんですよね。そこからどんどん日常芝居が楽しくなっていったんです。
――じゃあもしオリジナル作品があったら、日常物を手掛けられたいと。
濱田 そうですね……。いや、アクションもやりたいんですけどね(笑)。『X』のテレビシリーズで1話のアクションシーンをやっているんですけど、それはそれで面白かったので……。機会があったらアクションもやってみたいなとは思います。
――浅香さんは今後、どういった作品に携わっていきたいですか。
浅香 確かにオリジナルは魅力的なんですよね。そういう意味で、自分が携わった中では『ギャラクシーエンジェル』が枷が外れた感じだったんです。あれは原作があるんですけど、キャラクターしか使ってないから。原作のレールがないものでやると、どうなるんだろう、という気はしますね。あと、できれば少年ものがやりたいです。
――え! そうなんですか? 少女漫画原作ものが多いからですか。
浅香 そうなんですよ。自分のところにそういう企画が来ないんですよね(苦笑)。
濱田 一度(少女漫画原作で)大失敗すればいいんじゃない(笑)。
――これまでやったことがないようなジャンルにも挑戦していきたいんですね。
浅香 そうですね。『ダイヤのA』に参加させてもらったときに、アクションもいいなと思えたので、そっちもやってみたいなって。
――最後に、今後の若手に期待することはありますか。
濱田 原画で有望な子が何人かいるんです。今回は作監もやってもらったのですが、できたらこのあと、ちゃんと技術を教えられるといいなと思っています。
浅香 そうですね……。アニメーターは物理的にいい悪いがはっきりしますが、演出は作品による場合があるのでね。ただその時々に言いたいことはあるので、聞いてくれたら山のように言うつもりはあります。
浅香守生:監督/絵コンテ/演出
マッドハウスを代表する演出家の一人。代表作は『カードキャプターさくら』(1998~2000年)、『NANA』(2006~2007年)、『ちはやふる』(2011~2012年)、『ちはやふる2』(2013年)、『俺物語!!』(2015年)、『カードキャプターさくら クリアカード編』(2018)、『ちはやふる3』(2019年)。
画面の隅々まで気を配り、巧みな技術で丹念に、ときに大胆に心情を描く、「詩情」を感じさせる演出で数々の作品を手掛けてきた。なかでも『カードキャプターさくら』は女子小学生読者が多い『なかよし』掲載の少女漫画が原作であったにも関わらず、「オタク」と呼ばれる大人の視聴者層を確立させたとも言われる。アニメ史に残る作品であり、日本のみならず海外のファンも多い。
濱田 邦彦:キャラクターデザイン/総作画監督/作画監督
初めて携わったマッドハウス作品は『Cyber City Oedo 808』。代表作に総作画監督・キャラクターデザインとして『NANA』、『俺物語!!』、『カードキャプターさくら クリアカード編』、『ちはやふる1~3』がある。人間味溢れるやわらかな表情を描き、浅香守生監督とタッグを組む作品が多い。