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Interview

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――マッドハウス作品を制作していて、「らしさ」みたいなものを感じることはありますか。

芦川 作品選びが他社さんと違うと思います。他社さんの話を聞くと「原作が流行っているから」が第一だと思うんです。それがトップダウンで降りてくるみたいな話を聞くんですけど。マッドハウスは、プロデューサーに選ばせてくれるんですよ。プロデューサー自身が納得する作品を持たせてくれる。そこは大きな違いだと思います。

――非常に珍しい気がします。

芦川 クライアントさんからすると、「マッドさん選り好みしすぎ」とよく言われるんですけど。

佐藤 (笑)。でも、1年2年お付き合いする作品なので、やっぱり監督含めて面白いと思っている作品を作らないと。各プロデューサーのカラーで作品を届けられるのが、今のマッドの特徴でしょうね。

――先ほどお話しした通り、それこそバラエティに富んでいる作品制作は、以前からされていましたが……。

佐藤 でも、昔はプロデューサーじゃなくて、クリエイター寄りの作品が多かったから。だからこそ、途中で頓挫したりトラブルが起きたりすることも多かったんですよ。
まあ僕は、逆に会社を運営するためのテレビシリーズやOVA側をやるスタッフだったんですけど。器用だから「あれやってこれやって」に対応するみたいな感じで……。それは今も変わらないか(笑)。このあいだも、監督をやりつつ『ダイヤのA』のアクション作監をやっていたしね。「野球好きだからいいけど」って(笑)。

芦川 ええっと、マルチな才能なので……。

佐藤 器用貧乏ですよ。経験値が長いだけの話でね。

――佐藤監督はマッドハウスらしさについて、どのようにお考えですか。

佐藤 初期から中期はワンマンなところがあったから、力技でやっていた印象で。それが「変なことをする会社」という、ある種のマッドハウスらしさを産んでいたとは思うんです。
ただ、逆に言うと、それで振り回されて苦労した人たちがいっぱいいるのも確かだとは思うんですよ。今はある程度準備期間と制作期間をきっちりもらえる作り方をしているので、メンタル面や精神面は非常によくなりましたね(笑)。自分も楽しんでいるので、昔の方が良かったという感覚はないです。今の方が作りやすくなりました。

――作品の演出面におけるマッドハウスの特徴はどのようにお考えですか。

佐藤 ううん。そうだな……(少し考えて)。

――佐藤監督は『アカギ』や『カイジ』をやられていますし、マッドハウス演出のひとつの潮流を生み出したと言えるのでは。

佐藤 『アカギ』は、たまたま思いつきで言ったことがうまくいった珍しい作品なんですよ。ただ、その流れで『カイジ』はやっているし、突飛な演出を主目的にはしていないんですよね。

――そうなんですね。

佐藤 『アカギ』や『カイジ』はギャンブルもので、精神面のやり取りをどう表現するかに注力しているだけの話なんです。僕は、どの作品をやる時も、「この作品の面白いところってなんだろう」ってまず考えるんですよ。要は原作へのリスペクトは必ずして、制作をしているんですよ。
なぜかというと、僕、基本的にクリエイター的な能力がそんなに高くないから(苦笑)。自分のなかでどう消化して面白くさせるべきかをとにかく考えるタイプなんです。だからやりながら失敗することもありますけどね。でも本数が増えてくるに連れて、経験値は間違いなく上がってきている。毎回突飛な演出はしないけど、だんだん安定してきているはずだと思っていて。

――それはそれで演出法のひとつですよね。

佐藤 でも安定しているのと並行して、考える期間も長くなっているから時間がかかるようになってきて。若い頃のほうが勢いはあったなとは感じますね。例えば若い芦川君なんかについていくのがしんどくて(笑)。

芦川 そんなことないでしょう。

佐藤 しょっちゅう喧嘩していますけどね(笑)。

芦川 制作も進めるための必要悪ですからね。

佐藤 だから、僕自身がマッドハウス演出の一部潮流を築いた、なんていう気もしないし、僕以外についても監督次第だと思いますよ。まあ、川尻さんがやってくれればマッドハウスを昔から知っている人が「マッドハウスらしい作品ができた」と言ってくれそうな気はしますけどね。

――先ほどから何度か名前が上がっていますが、最新作の『AIの遺電子』では川尻さんも参加されていますよね。

佐藤 そうなんですよ。絵コンテを切ってもらえて助かりました。世界観がお好きだって。

芦川 楽しかったって言ってもらえて。

――川尻さんも、やはり本作のようなしっかりしたドラマがお好きなのですか。

佐藤 そういうことですね。自分の演出スタイルもできている方なので、上がったフィルムを見ると、「あ、川尻さんらしいな」とは感じますからね。やっぱり安定して面白いです。スキルのある人がやると安定感はばっちりなんですよ。

――面白いポイントをしっかり押さえてくれるということですね。

佐藤 『AIの遺電子』はスタッフが濃かったんです。他にもレギュラーでやってくれた清水(健一)さんも安定感がありすぎちゃって(笑)。なにも言うことがない。

芦川 監督クラスがスタッフとしてかなり入っているので、それは安定しますよね。ありがたい限りでした。


佐藤雄三:監督/絵コンテ
サンリオ、スタジオぎゃろっぷ等を経て、マッドハウスで活躍中。代表作に『YAWARA!』(作画監督)、『MONSTER』(絵コンテ、演出)、『闘牌伝説アカギ〜闇に舞い降りた天才〜』、『逆境無頼カイジ』シリーズ(いずれも監督)などがある。近年では2022年1月放映の『ハコヅメ』で監督を務める。

芦川真理子:プロデューサー
2008年マッドハウス入社。『はじめの一歩』、『HUNTER×HUNTER』等の作品で制作としての経験を積み、デスク、設定制作、アシスタントプロデューサーを経て2022年1月放映の『ハコヅメ』からプロデューサーを務める。